【菌ちゃんと共存共栄】バクテリアの支配下にある人間と熱帯魚

kuratotoは魚が大好きなので熱帯魚を飼育しています。

淡水・海水問わず熱帯魚をはじめると、必ず細菌(ラテン語:バクテリア)の話と出会うことになります。

チェック
熱帯魚や水草を上手く飼育するにはどうやら目に見えないバクテリアが作用している

熱帯魚に限らず私たち人間に深く関与しているバクテリア

一体どのような生物なのでしょうか。

知っているようで謎だらけのバクテリアに関して学んだことをまとめてみました。

生物の進化に焦点をあてる

現代科学者に支持されてる考え方として、生物は真核生物・真正細菌・古細菌の三つのドメインに分類しています。

地球上の生物の系統を辿たどれば「このどれかに当てはまる」という事になります。

  1. 人間は真核生物
  2. バクテリアは真正細菌
  3. 真核生物・真正細菌どちらにも属さない古細菌

人間は真核生物に属し、バクテリアは真正細菌に属します。

古細菌は分類上では真核生物に近いが、外見では真正細菌との見分けがつかない。

細胞の違いで見ると真正細菌・古細菌は核膜を持たない(原核細胞)原核生物で、それ以外の生物は核膜を持つ(真核細胞)真核生物に属すとされています。

ウィルスは生き物?
遺伝物質を持つが細胞がなく自己増殖出来ないために生物と見なされない

細菌の培養と飼育水が出来上がるまで

ロシアの生物学者セルゲイ・ヴィノグラドスキーの実験で、ヴィノグラドスキー・カラムは有名です。

高さのある円柱型のガラス容器に池から採取した土を入れて水で満たします。あとは日光の当たる場所に置いておくと容器の中に細菌の層が出来上がります。

細菌マンション
  1. 最上階は光合成で酸素を作るシアノバクテリア
  2. その下は体内に硫黄をためるチオバチルスなどの硫黄細菌群
  3. その下は光合成細菌(光合成はするが酸素は作り出さない)の紅色細菌群
  4. その下はかなり低酸素状態且つわずかな光の中で光合成を行う紅色硫黄細菌
  5. その下は硫化水素を栄養とする緑色硫黄細菌群 (地面に近いこの層は酸素の無い嫌気的な環境でかなり臭い)
  6. 一番下の土中では酸素がなく硫化水素(有毒ガス)を作り出す硫酸還元細菌が増殖

この細菌マンション(生態系)が出来上がるのに6週間程度必要とするのだから、水槽の立上げ~飼育水が出来上がるのも同じ時間を要することになります。

チェック
新しい水道水で熱帯魚は飼えません。細菌が住み着くまでに6週間ほどの時間が必要。

赤ちゃんと潔癖症

ほんの束の間ですが、生まれたばかりの赤ちゃんは無菌状態です。

厳密に言えば羊水の中に居るまでが無菌で、産道を通過した時点で母親の細菌が取り付くようです。

皮膚は細菌が増殖し、消化管には大腸菌乳酸菌などが一番乗りして住み始めるのです。


大腸菌は消化管の酸素を使い果たすので腸内は嫌気性細菌が増殖します。

メモ
最終的には100種以上の細菌と原生生物も検出されるとの事。これらの細菌たちは宿主が食べたものをエネルギーに変えて増殖を行います。

このエネルギーに変換する代謝が発酵であり、この過程で細菌たちは多糖類を転換して宿主にエネルギーを供給してくれたり、同時にガスも作り出すので腸管に吸収されなかったガスはおならとして肛門から放出されます。

成長と共に赤ちゃんは家族が触った玩具や身の回りの物を触ることになります。

その手で自分の顔も触るので大量の細菌を頬張っていることに・・・。

大人は一日に自分の顔を100回以上触れますが、赤ちゃんが自分の顔を触る回数は大人の数倍多いです。

従って大人よりもたくさん細菌を体内に取り入れていることになります。

ウィルスは生物ではない
ウィルスは細菌に取り付きます。自己繁殖出来ないので細菌の力を借りてはじめて増殖出来るのです。

細菌ウィルスではありません。

手を洗ったり、うがいをしたり、清潔を保つことは必要ですがあまり神経質になってはいけないと思います。

メモ
除菌・抗菌・滅菌・殺菌も度が過ぎると人の免疫力を弱める

そもそも自分の体にたくさんの細菌がいるのだから排除しようと考えること自体が無意味なのではないでしょうか。

人間と細菌の深い関係

生物は細胞で構成されています。

人間の細胞は数兆個と言われてますが、体内の細菌数はなんと数十兆個もいるのです。

チェック
微生物学者によれば体内細胞全部のDNAと細菌全部のDNAを合わせれば、遺伝的に人間は細菌に近くなると考えられている

人間の皮膚には常在細菌が存在しているので、からだ全体が細菌で包まれている状態です。

特に常在菌のエサとなる水分や脂肪分が多い場所、例えば脇の下や顔や性器の周辺で、1cm角の面積に数百万個生息しています。

しかし菌がいるからと言って人間に害を及ぼしてはいません。

それどころか病原性の菌体が皮膚につかないように縄張りを陣取って守ってくれています。

このことから細菌が多く住み着いている部位は人間の急所と言えるのかも知れません。

余談ですが・・・

私は他人と比べて汗っかきと感じます。

他人が暑いと感じない環境でも私には暑い。

デパートでは真夏でも館内の温度を26度以上に設定しているが、これだと汗をかいてしまう。

もう一つ他人と比較して感じることがあります。

それは私のお腹は人より強いと思うこと。

他の人が吐いたり下痢をするような食べ物でも私は大丈夫。

「ちょっとお腹の調子が・・・」程度で終わります(笑)

原因は何だろう?

腸内の常在細菌は代謝(発酵)する過程でを生じます。

この放出した熱を細菌は使えないので、熱エネルギーは宿主である私が使用することになります。

私の体は温度が上昇し汗をかくことで熱を放出している。

汗っかきと何か関係しているのかも知れない。

私の腸内細菌が人一倍元気なのか?

細菌の量が多いのか?

そして腸内の常在菌パワーは食中毒を起こすサルモネラ菌などにも負けない。

これにより私のお腹は強いのではないかと思うのです。

人それぞれに住み着いている常在細菌の種類は違います。

香水やコロンなどをつけて臭いを誤魔化しても体臭は消えません。

その人に住み着いている皮膚細菌の代謝による臭いだからです。

エクリン腺やアポクリン腺から出てくる汗に細菌は集まります。

汗腺かんせんからの塩分や脂肪分を分解して硫黄などの分泌物を作り、やがて揮発したものがその人の体臭となるのです。

風邪と抗生物質

本来、抗生物質は微生物・バクテリアが自らの生存危機に陥った場合に敵のバクテリアを弱らせる若しくは殺すために作られる物質です。

空中のどこにでもいるアオカビ属は殺菌性抗生物質であるペニシリンを産生し相手を殺してしまいます。

大腸菌は静菌性抗生物質であるコリシンを産生し敵のたんぱく質合成機能を破壊して増殖を遅らせるのです。

風邪の症状が出た場合の大半はウイルス感染によるものです。

インフルエンザは喉の上部にウイルスが感染し、感染者が咳やくしゃみをするとウイルスが飛沫して他の人に感染します。

メモ
抗生物質はあくまで細菌にダメージを与えるものでありウイルスには効かない

細菌が多くの抗生物質にさらされるとどうなるのでしょうか?

生き延びる術を備えた細菌は耐性細菌に変化して適応してしまうのです。

耐性細菌を退治しようと人間が新たな抗生剤を作った所で、細菌はそれを攻略し進化します。

さらに複数の抗生剤を用いれば複数の防衛機能を備えたスーパーバグ超多剤耐性菌)が登場するのです。

ワーニング
抗菌剤や除菌剤を多用しても細菌たちには通用しない

その端的な例が院内感染です。

病院ではスーパー耐性菌が出現する絶好の場所と言われているのです。

食中毒や肺炎を起こす常在細菌の黄色ブドウ球菌は耐性遺伝子を持った多剤耐性菌へと進化しました。

原油とイスア岩体

グリーンランドの北極線より下方に位置するイスア地域(グリーンランド語で地が消え果てる場所)。

イスア岩体は38億年前に誕生した地球最古の堆積岩と言われています。

この岩には地球上に酸素をもたらしたシアノバクテリアの祖先と考えられる化石が含まれていると考えられていました。

現在は27億年前のシアノバクテリアなど細菌の死がいで作られたストロマトライト岩石が最古の物と言われ、西オーストラリア州のストロマトライトは現在も成長している数少ない岩石として有名です。

西オーストラリア州、テティス湖のストロマトライト 
Wiki Commons / Ruth Ellison

20億年経過した地球の大気は酸素が安定した状態、つまり光合成細菌が安定した状態になりました。

大気中の酸素割合は徐々に増加し現在の酸素量と同じになったのは5億年以上前のカンブリア紀で、この時代に多種の好気性生物が誕生した(カンブリア爆発)のです。

様々な形状の生物により食うもの(捕食)と食われるもの(被食)の食物連鎖が始まりました。

何千年の時間をかけて微生物や植物や貝などの死骸が海底に蓄積します。

有機物は堆積してケロジェンと呼ばれる固まりとなり下の方は上からの圧力で水分が押し出されて炭素水素だけの炭化水素となります。

炭化水素の塊は更なる圧力と熱により液状化し、周辺にある多孔質な岩に押し込まれます。

メモ
原油を含んだ岩(オイルシェル)からは葉緑素が発見されており、これは光合成細菌にあるクロロフィルと似ていることから細菌たちの分解によって原油が作られると考えられている

地球の核に近い部分は液体が熱と圧力によって天然ガスとなり、海底に近い浅い部分では個体のままで石炭となります。

自然とはバクテリアのことなのか?

地球の栄養循環を行っているバクテリア。

金属や石やゴムなど細菌が分解出来ない物はありません。

自然風化にしても細菌の浸食によって岩がもろくなるわけで、無酸素状態しか生息出来ない硫酸塩還元細菌は硫酸でコンクリートをも浸食してしまいます。

細菌同士で争いながらも時には協力しスクラップ&ビルドを今も繰り返しているのです。

人間は「自然に任せる」とか「自然治癒」などの言葉を使いますが、自然とは良かれ悪しかれバクテリアが常に関係しています。

そして細菌にコントロールされているのは人間も熱帯魚も同じです。

この地球上にはどれくらいの細菌がいるのだろうか・・・。

ある学者によれば、全人類79億人の2000倍の質量に及ぶ細菌が存在しているとの事。

あくまでも計算上の話ですが、少なく見積もっても人間よりも相当数の細菌たちがいることは間違えないのだろうと思います。

チェック
大半の細菌は土中に存在していることから、田畑や山など土の臭いはつまり細菌の臭いなのです

バクテリアの繁殖した水槽も土と同じような臭いがします。

バランスの取れた水槽は、生臭さや変な臭いはしません。

長々と学んだことを羅列しましたが、すべてが現代までの研究者や学者の方々の弛まぬ努力により解明された内容の一部を代筆したに過ぎません。

細菌は人間が入り込めない苛酷な環境にも生存しているために解らない事の方が多いのです。

キレイにすることの極意

kuratotoは清掃などの仕事をしています。

例えばエアコンの分解洗浄で汚れやカビなどをキレイにします。

これ自体は良いと思うのですが、キレイにした後に除菌コートなどは「どうなんだろう?」って。

スーパーバグのお話しをしましたが菌ちゃんは進化します。

菌ちゃんと共存
過剰な除菌や殺菌は菌ちゃんに逆らうこと

そうするとどうなるでしょうか・・・

除菌剤によって一定期間ですがカビの発生は防げるかも知れません。

ですが次にカビが発生した場合、前よりも強いカビ菌の可能性があります。

今までエアコンに付いていたカビ菌は優しいカビでも、次に出たカビは人間にもっと害をもたらす除菌コートに負けない強いカビが発生するのです。

優しいカビは吸い込んでも害は少ない

ワーニング
家の中で繁殖出来なかった強力なカビが勢力を拡大することになる

あくまでもkuratotoの感覚でのお話ですが、菌ちゃんとは共存共栄の精神で接することが人間にとっても望ましいと切に感じるのです。